【カンボジア】プノンペンのダイヤモンドアイランドに象徴される「カンボジアの中国化」

【カンボジア】プノンペンのダイヤモンドアイランドに象徴される「カンボジアの中国化」

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今多くのメディアで取り上げられているカンボジアの「中国化」。カンボジア進出を考える日本の企業にとっても中国企業の動向はたいへん気になるところです。本記事ではプノンペンのダイヤモンドアイランドに象徴されるようなカンボジアにおける中国からの資本流入について触れてみたいと思います。

カンボジアと中国の関係

二国間接近の経緯

1991年のパリ和平協定後、当時の政権の対立政権寄りであった中国はカンボジアとは距離がありましたが、内部の主導権をめぐる勢力争いでラナリット第1首相が失脚し、フン・セン首相が誕生しました。当時のカンボジアは国際社会からは孤立していましたが、そこに接近していったのが中国でした。そして中国のカンボジア援助は拡大していき、2010年にはついに最大の援助国であった日本を抜いて最大の二国間援助国となりました。

拡大する中国の援助

中国はODA(開発援助)を行っており、その分野はインフラはもちろん農業やエネルギーなど多岐にわたります。教育の分野においては無償で援助を行ってきました。「一帯一路」を掲げる中国資本によって現在進行している大きなプロジェクトとしては、2023年に完成予定の国内初となる高速道路(総工費約20億ドルで、プノンペン~シアヌークビル間の190キロを結ぶ)や、コッコン新空港の計画にも中国資本が入っています。このコッコン新空港は滑走路の長さが民間航空機の仕様を超えているとのことで、欧米諸国からは軍用目的ではないかとの批判も起こっています。

中国の対カンボジア黒字

2000年代半ばから始まった中国のカンボジア進出となる開発援助。習近平国家主席体制になった2012年より急速な拡大を見せます。中国は以下のグラフにもあるように、援助を行いつつ40億ドルを超える黒字をだしています。これに対してカンボジアの対中貿易は赤字続きとなり、一見中国の進出はカンボジアに恩恵をもたらしているように見えますが、現状はカンボジアが大きな債務を抱えることとなっています。

(出所 カンボジア商業省)

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地元カンボジア人と中国人の摩擦

一帯一路の影響で中国資本は凄まじい勢いで押し寄せています。特に観光開発が進むシアヌークビルなどは中国人観光客で溢れ、地元カンボジア人とのトラブルが発生しています。プノンペンではスリやひったくりの事件が多発していますが、シアヌークビルでは中国人を狙った組織的な詐欺や誘拐などの大きな犯罪が見られるようです。

また、開発による環境破壊問題で、地元の住民や活動家との衝突も見られます。過去大きな反対運動が起こり注目された事例として、カンボジア南西部のアレン渓谷の中国企業によるダム開発プロジェクトがあります。この事例では先住民への立ち退きや生態系の破壊につながることから地元の住民らの大規模な反対運動へと発展しました。

この問題をテーマにしたアートを展開するカンボジア人コンテンポラリーアーティストの記事もあわせてお読みいただけたらと思います。

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中国語だらけのダイヤモンドアイランド

プノンペンの東部開発地域であるダイヤモンドアイランドを歩いてみました。

各所で目につく中国語。

建設ラッシュのダイヤモンドアイランドでは急ピッチで高層ビルの工事が行われています。

不動産開発で中国人の居住者であふれるであろうこのエリアですが、果たしてどれくらいの値段になるのでしょう。

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「何があっても中国は友人」フン・セン首相

近年、東南アジアの町の中に中国テイストの派手な建物や中国語のサインを見かけるのはカンボジアに限ったことではありませんが、プノンペンのダイヤモンドアイランド周辺などは取って付けた感が特に感じられます。一帯一路の影響で中国に負債を抱え、土地を肩代わりに取られるというような債務の罠の危険にさらされつつも中国資本による開発が急ピッチで進んでいるカンボジア。

「中国からの援助は西側とは違って、あれこれ条件をいわないから助かっている」こういった趣旨の発言が度々聞かれるフン・セン首相は非難されてもその姿勢は変わらず、またフン・セン首相に反対する野党勢力は中国のハッカーからサイバー攻撃を受けているなど、中国の影響は今後建物だけでなくカンボジアのガバナンス、そしてカルチャーにも深く影響してくるでしょう。

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