ミャンマー進出においてマーケティング戦略を練る上で今後大きな位置を占めてくるのがウェブマーケティングです。ミャンマーも他のASEAN諸国同様に最も利用されているソーシャルメディアがFacebookです。ミャンマーのウェブ利用状況や成長率を参考にしながらFacebookマーケティングの重要性や特質を見ていきます。
ミャンマーのデジタル市場について
まずミャンマーのデジタル市場の背景について知っておきましょう。
ミャンマーの人口
ミャンマーの総人口は現在5460万人でそのうち都市部の人口が35%を占めています。ヤンゴンに最も人口が集中しており、その他マンダレーやネピドーが続きます。
ミャンマーのデジタル時代到来
2011年に就任したテイン・セイン大統領が経済開放を行う以前の軍事政権下のミャンマーでは、経済的に鎖国状態で、携帯電話はおろか固定電話の普及も行き届いてないような状況でしたが、2014年に海外の携帯電話会社の参入を政府が許可したのを契機に状況は激変。それまで何万円もしていたSIMカードが数百円程度で購入可能となり、一般市民にも手に届くほど安価になったことでシェアが拡大しました。東南アジアではこのようにパソコンからスマートフォンに段階を経て移行していくのではなく、一気にスマホ時代を迎える国が多く、ミャンマーはその中でも特に急速に普及した国の一つといえます。
ミャンマーのデジタル市場に関する統計
ではミャンマーのデジタル市場に関する調査について見ていきたいと思います。情報元は、イギリスのデジタルマーケティング会社We Are Social Ltd.による2017年の統計データです。
We Are Social Ltd
URL:https://www.slideshare.net/wearesocialsg/digital-in-2017-southeast-asia
ミャンマーでのデジタル利用者数の統計
インターネット利用者数 1400万 普及率26%
ソーシャルメディア利用者数 1400万 普及率26%
モバイル加入者数 5000万人 対人口比 93%
モバイルでのソーシャル利用者数 1300万人 普及率24%
モバイルの加入者はミャンマーの人口に対して93%となっており、一人が複数契約をしている可能性を考えてもかなりの普及率です。
ミャンマーでのウェブ成長率
インターネット利用者数 前年比97%増 700万人増
ソーシャルメディア利用者数 前年比84%増 600万人増
モバイル加入者数 前年比38% 1400万人増
モバイルでのソーシャル利用者数 前年比106%増 700万人増
成長率を見てみますとインターネット利用者やソーシャルメディア利用者の数がかなりの伸びで、モバイルでのソーシャルメディア利用者数が100%を超えています。
ミャンマーのウェブトラフィックデバイス
デスクトップPCまたはノートパソコン利用者 28% 前年比71%増
モバイルフォン利用者 70% 14%減
タブレット利用者 2% 前年比0%
その他デバイス 0% 前年比0%
現在世界的にウェブをPCで閲覧するよりモバイルの利用者数の方が多いという点では同じですが、先進国がPCからモバイルに移行したのとは逆に、ミャンマーの場合モバイルのみの利用だった状態から経済の上昇に伴ってPC利用者が増え始めている状況と考えられます。
ゲーム機やタブレットなども利用されている日本に比べると、モバイルかPCかのほぼ二択であるのが特徴的です。
ミャンマーのFacebook事情
ミャンマーのFacebookに関するデータ
月間利用者数 1400万人
モバイルを経由した利用者 93%
毎日の利用者 49%
男性利用者 64%
女性利用者 36%
まずこの統計データを見ますと、Facebookの月間利用者数がインターネット利用者数とほぼ同じことから、モバイルを持っている人の100%近くがFacebookを利用していることになります。そしてその93%がモバイル経由の利用となっています。男女比は意外に男性の方が利用者多いですね。
ミャンマーでFacebookが一人勝ちな理由
現在のFacebookの立ち位置
前述の2014年に海外の携帯電話会社の参入によって価格が下がり、テレビよりも持っている家庭が多いのではないかという程普及したスマートフォン。そしてスマホを持っていたら必ずFacebookのアカウントを持っています。コミュニケーションはもちろん、ショッピングなどもFacebook。そして企業やサービス業のお店もホームページを持たずFacebookを公式ページとしているところが多いのが現状です。
ウェブ検索もGoogleではなくFacebook?!
ミャンマーでは驚くことにGoogle検索があまり利用されていません。検索もFacebookで済ませます。これには以下にあげるGoogleとFacebookがサポートしているフォントの違いという重要な問題が絡んできます。
【重要】Zawgyi (ゾージー)とUnicode (ユニコード)問題
ウェブフォントの入力方式は国際的にUnicodeが採用されています。日本でも以前はホームページによっては文字化けがあり、正しく表示させるためにUnicodeに切り替えなくてはならなかった時期がありましたが、今ではUnicodeに統一されて文字化けなどもまず見かけることはありませんね。
しかしミャンマーでは国際基準であるUnicode が使用されず、Zawgyiという入力方式が一般的に広く利用されており、文字入力はZawgyiキーボードアプリを入れてZawgyiキーボードを利用しています。Zawgyi入力はGoogleと相性が悪く、文字化けしてしまい検索してもヒットしません。せいぜいごく一部の人が英文字入力で検索するくらいでしょう。
そこで利用されるのがZawgyiに対応しているFacebookです。多くの企業が検索に引っかからないホームページにコストをかけず、Facebookページを利用しているのはこのためです。
Zawgyiフォントの台頭はミャンマーのデジタル市場を狭めてしまう弊害的な面を持っています。このままではミャンマー進出を考える企業にとってウェブマーケティングは「SEOも意味をなさない」非常にハードルの高いものになってしまいますが、7月25日発行のThe Daily Elevenによると、「通信局が携帯電話の輸入業者に対して、Unicodeをサポートするデバイスのみを輸入するよう指導した」とのことです。端末からUnicodeへ移行を図ろうとするミャンマー政府の動きですが、今後もこのZawgyi とUnicode問題はとても重要になってくるため注視したいところです。
今後のウェブマーケティングの展開
東南アジア諸国と同じくミャンマーでもFacebookが最も利用されているソーシャルメディアです。しかし上記のフォント問題があることから、他のASEAN諸国とは違う特殊なデジタル市場といえます。このことから従来のノウハウでいきなりウェブ構築をすると大コケの可能性があります。クレジットカードの課金システムや配送システムはもちろん整っていませんのでEコマースなどはまだまだ先の話。現状はローカル企業のようにFacebookを利用したマーケティングが無難ですが、ミャンマー政府にUnicode対応の動きが見え始めていますので、来るべきGoogle検索時代に向けて動向を見極めつつ準備する必要がありそうです。
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