バンコク在住画家「阿部恭子」〜アートワークとアーティスト支援・育成への取り組み

バンコク在住画家「阿部恭子」〜アートワークとアーティスト支援・育成への取り組み

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生命力あふれる色彩で、生き生きと描かれた動物や人がエネルギーを与えてくれるタイ在住の女流画家・阿部恭子さんが、バンコクのアソークにあるGallely 21にて、個展「想像の森」が2020年7月21日~8月8日の期間開催されました。

アートワークと、アート支援プロジェクトや育成に取り組み、また母親としておくるタイでの暮らしについて個展の模様を交えつつご紹介いたします。

食が導いた南国への道

福岡のデザイナー学校を卒業した阿部さんは、1990年フリーランスのイラストレーターとして独立します。仕事の拠点であった福岡では、アヴァンティというフリーペーパーの表紙を長らく担当。

福岡が地元である私にとって、アヴァンティは馴染みのある情報誌です。表紙はいつも目にしていたので今回の取材はなんとも光栄で懐かしいものでした。

阿部さんの作風から、タイに興味を持たれたことは頷けますが、意外にも最初にタイに惹かれた理由は食べ物でした。ハマった料理を具体的にあげるとトムヤムクン。このタイを代表する料理が彼女を移住に掻き立てるきっかけでした。幾度となく旅行でタイに訪れるうちに、ついに1996年タイへ本格移住することとなります。

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タイ移住後の活動

タイ移住後の90年代後半は、バンコクの老舗画廊アコ・ギャラリーにて個展を重ね、2007年にJapan Foundationにて個展「The Country that I Love-Thailand(Installation)」開催。そして2008年には作品がタイ・ブンチャイ美術館に所蔵されるなど、タイにおける彼女の作品評価は確固たるものとなっていきます。

彼女自身が印象に残るキャリアとして、2011年にはタイ・バンコク市・福岡市修好20周年ポスターに起用され、福岡とバンコクを、日本とタイを結ぶ架け橋となったことや、2018年にBTSバンコクスカイトレインの車体のラッピングデザインに起用され、彼女の作品がラッピングされた電車がバンコク都内を走ったことをあげています。

アートワークはビジネス業界においても企業コラボというかたちで展開しており、例えば日系企業の画材メーカーとのコラボでは、その企業の画材を使った作品制作を行いました。また、作品をノベルティの素材として提供することもあります。

現在企業とともに、ワークショップも開催しており、自身では「Kids Work Shop」を主催するなど精力的な活動を行っています。

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国が変わると作品もかわる?

アーティストは活動の拠点が変わると作風が変わったり、コンセプトが変わったりすることがよくありますが、阿部さんに場合はタイ移住によってどのような変化があったのでしょうか。

日本時代から彼女の作品を知る人からは、描いた人物の鼻が横に広くなったと言われたそうで、作品を見ていくと確かに南国の新鮮な空気をたくさん吸い込めるような立派な鼻が認められます。

そしてご自身が大好きなタイの市場の色彩。これは生きた参考材料となっていますね。

日本とは違うタイの家庭

現在タイでは母親としての仕事をこなしながらの作家活動。移住後タイ人の旦那さんの元に嫁いだ阿部さん。日本とはかなり違う独特な生活習慣があるそうで、特に家事におけるしきたりは順番や決まりごとが重んじられ最初は苦労されたとか。日本でもしきたりは各家違う場合があり大変ですが、国が違えばなおのことですね。

こうした中で、異文化を受け入れながら家庭を育んでいく日々をおくっておられます。

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ワークショップと日本の子供たち

阿部さんは自身で主催する「Kids Work Shop」を開催しています。ここでは日本人の子供たちに絵画をおしえていますが、母親でもある彼女にとって、子供の育成の場にもなっているようです。

お話を伺う中で、日本人の子供はなかなか自発的に次のアクションを起こせず、指示待ちする傾向があるようで、異国に住んでいてもやはり日本人の性質は簡単にかわるものではないと感じました。

ただ絵画をおしえるだけでなく、それぞれの個性を観察し、彼女の指導によってのびのびした自主性が育まれるといいなと思います。

また、阿部さんはスリランカに壁画プロジェクトで訪れた際、ストリートチルドレンの独り立ちプロジェクトに参加しています。そこでは社会的に厳しい境遇に陥った子供たちが、驚くほどの自由な発想と、高い技術のポテンシャルを感じさせてくれるそうで、充実した取り組みとなっているようです。

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今後の活動

・現在最も注力しているアジアアーティストの支援プロジェクトである「ホワイトキャンバスプロジェクト」の取り組み。

・ハンディキャップを持つ子供たちへの絵画指導と、その作品のグッズ化を目指す活動。

・その他、育成、アートプロデュースなど。

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ホワイトキャンバスプロジェクトについて

「白いキャンバスに向かって、創造的に自由で明るい未来を描いて欲しい。」

そんな思いが込められた名前を持つホワイトキャンバスプロジェクトは、絵画コンテストとITテクノロジーを組み合わせることで、 発展途上にあるアジアの国々の優れたアーティストたちを支援する、これまでになかった取り組みです。

優れた才能を持ちながら、 まだ世に出ていないアーティストたちが、経済的事情などで、アートを生業とすることを断念する人たちは少なくありません。そのような人たちへ、アーティストとして活動していくチャンスを与え、作品を提供して終わりではなく、提供した後も制作したアートとつながっていけるシステムの構築を行います。

寺田倉庫の前社長、中野善壽氏が立ち上げた「東方文化支援財団」は、 スリランカを基盤とする国際NGO団体スプートニク・インターナショナルとともに、発展途上にあるアジア諸国で、全く新しいアーティスト支援の枠組みが立ち上げられました。

技術面をサポートするのは、アート業界の革命を目指すスタートアップ企業「スタートバーン」。 絵画に取り付けるICタグと、ブロックチェーン技術を組み合わせた最新テクノロジーを、 優秀作品の展示販売に導入します。 選ばれたアーティストには、コンテストの賞金だけでなく、その作品がその後生み出す収益の一部が、 生涯にわたり還元されることになります。

このプロジェクトには、プロのアーティストを目指す人だけのものではなく、子どもを含め多くの人たちに、コンテスト参加を通じて絵を描く楽しさを感じてもらったり、アート鑑賞の機会を増やしてもらったりすることも狙いの一つとなっています。

近年、欧米を中心に「アート教育」や「アート思考」の重要性が指摘されていますが、アーティストを名乗るかどうかにかかわらず、多くの人がアートに関する感性、知識を磨くことにより、複雑な社会問題が創造的に解決されていくと考えるためです。

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作家プロフィール

阿部恭子

1967 大分県生まれ

1987 福岡のデザイナー学校を卒業

1990 フリーランスのイラストレーターとして独立

1996 来タイ

1997 講談社「おひさま絵本大賞」受賞

1998 アコ・ギャラリーにて個展「Spring Surprise」開催

1999 国際交流基金と大同生命により、宮沢賢治の絵本を制作、個展を開く

2001 アコ・ギャラリーにて個展「Being Myself」開催

2004 アコ・ギャラリーにて個展「Can’t Stop Painting」開催

2006   アコ・ギャラリーにて個展「Here comes the dog」開催

2007 Japan Foundationにて個展「The Country that I Love-Thailand(Installation)」開催

2008 作品がタイ・ブンチャイ美術館に所蔵される

2009 タイ政府観光庁・タイ航空・福岡情報誌「AVANTI」mp協力による個展「私のいる場所」を福岡市ギャラリーにて開催

2011 タイ・バンコク市・福岡市修好20周年ポスターに起用され、作品はバンコク都知事に贈呈される

2012 アコ・ギャラリーにて個展「Let’s Go Far, Far Away」開催

2013 岩手県釜石市コスモス公園 43m×8m・希望の壁作成

2014 アコ・ギャラリーにて個展「東北」開催

2016 ポプラ社 絵本「あしたが好き」出版

2017 アコ・ギャラリーにて個展「タイに暮らして(Living in Thailand)」開催

2018 BTS(バンコクスカイトレイン)ラッピングデザイン緒方俊平著 夾竹桃物語「わすれていてごめんね」紙芝居制作

​      スリランカ壁画(年内完成予定)

現在タイで様々な企業とともにアート促進のためのワークショップを各地で開催

日ごろは作品を制作するかたわら、「Kids Work Shop」を主催している

URL:https://abekyokolove2.wixsite.com/abekyokoartlife

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