【タイ】「町から消えたレジ袋」と加速する廃プラスチックの輸入禁止による日本への打撃と新たな商機

【タイ】「町から消えたレジ袋」と加速する廃プラスチックの輸入禁止による日本への打撃と新たな商機

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2020年1月1日より、タイでは大手スーパーやコンビニエンスストアなどでプラスチック製レジ袋の配布が取りやめになりました。タイ政府は環境への影響を懸念しプラスチックごみの削減を呼びかけ、タイ国内の大手スーパー・コンビニがこれに応えたためです。また、東南アジアでは廃プラスチックの輸入規制が強化されており、特にタイでは運用ベースで輸入禁止されています。今回の町から消えたレジ袋と廃プラの今後についてお伝えしたいと思います。

タイのレジ袋廃止の経緯

タイでは年間およそ450億枚のプラスチック製レジ袋が利用され、リサイクル処理がままならず、投棄されることによって起こる海洋汚染の問題が深刻化しています。ジュゴンなどの動物がプラスチックごみを誤って食べたことで死んだとみられるケースが相次いでおり、このようなことからタイ政府はプラスチックごみの削減を呼びかけていました。昨年は大手スーパーなどでノーレジ袋デーが設けられるなどしていましたが、1月1日からは大手スーパーやコンビニを中心に95社、およそ2万5000店がレジ袋廃止を決行し、1月1日からレジ袋の配布を取りやめました。

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タイの町から消えたレジ袋と個性的なマイ・エコバッグ

スーパーを訪れる買い物客は持参のマイバッグや、プラスチック製レジ袋にかわって布製のエコバッグが3バーツほどで販売されているバッグを利用しています。

拡散したSNSより引用
拡散したSNSの画像より

そんな中、SNSを賑わしているのが個性的なエコバッグに商品を入れる買い物客の投稿です。釣りに使う網や壺をエコバッグとして使う買い物客など奇抜なバッグがSNS上で拡散され盛り上がりを見せました。

拡散したSNSの画像より

その他リヤカーや、右の男性などはバイクを店内に持ち込んで商品を積み込んでおり、これはやりすぎでニュースになるほど苦情が出たようです(笑)

なんとなくこのような報道を見ていると、タイ洪水のときのイカダでくつろぐタイの人々を思い出してしまいました。レジ袋がもらえないという不便さを笑いに変えるところは流石だなと妙に感心してしまいます。まあバイクはやりすぎですが^^;

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行き場を失う廃プラスチックの輸出大国の日本

こうしたタイの動きに影響があるのが廃プラスチックの輸出大国である日本です。

海洋汚染とバーゼル条約改正

有害な廃棄物の国境を越えた移動を規制する国際条約であるバーゼル条約に改定があり、汚れた廃プラを輸出する際に相手国の同意が必要となりました。ペットボトルなどの廃プラはリサイクル可能な資源として先進国から輸出されますが、中には汚れた廃プラも混ざっており、途上国ではこれらの廃プラはリサイクルされず捨てられ、海洋汚染など環境への影響が問題となっており、輸出先の相手国の同意を得ることは非常に難しい状況であるといえます。

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中国から東南アジアへシフトした廃プラスチックの輸出先

2017年末に中国は「輸入ごみが環境を汚染している」とし、廃プラの輸入を原則禁止しました。日本は世界第3位の廃プラスチック輸出大国であり、2017年時点での日本の廃プラスチック輸出量は143万トンで、うち52.3%(約75万トン)が中国向けでしたが、中国の廃プラ輸入禁止を受け、新たな輸出先として東南アジアへとシフトしました。特にタイへの輸出は多く、2018年上半期に14万トンの廃プラを輸出。これは東南アジアで最も多い輸出量です。

タイの廃プラスチックの輸入禁止

しかし、こうした中国に端を発した廃プラの輸入禁止はタイでも2018年7月あたりから運用ベースで輸入禁止となりました。措置としてバンコク港における廃プラなどを積んだコンテナの荷揚げ禁止やプラスチックごみの輸入ライセンスの発給を一時停止などの厳格化が進んでいます。このような環境保護の動きは東南アジア全域に広がっており、工場が可動できないといったようなビジネスに打撃を被る現地リサイクル業者も出ています。

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廃プラスチック利用規制は新たな商機を生むか

こうした脱プラスチックのうねりはマイナス面だけでなく、商機を見出すきっかけにもなっています。それは「生分解性プラスチック」の生産です。生分解性プラスチックで作られた製品は、微生物によって分解可能なことから環境にやさしい製品として需要が高まっています。まだ生産コストの問題で販売価格の高さがネックとなっている部分もありますが、イメージ戦略を重視するコーヒーチェーンなどでの採用など、今後は販売先が拡大する見込みがありそうです。

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タダのゴミ袋も無くなったレジ袋廃止

昨年私は、ノーレジ袋デーはそのスーパーで買わず、レジ袋を配布している他のスーパーで買って、などのささやかな抵抗をしておりましたが、こうなってしまうとエコバッグ持参しかありません。それと同時にレジ袋をゴミ袋として使うこともできなくなりました。まあ露天などの個人商店はスープなどをビニール袋に入れますし、対象外であるためまだ手提げ袋に入れてもらえますが。

しかし相変わらずやると決まったらいきなり全面的に実施されてしまうのがタイですね。東南アジア全体も然りで、環境保護が一気に加速したため、ビジネスへの影響は大きいようです。日本で処理が追いつかない廃プラは海外へ輸出してしまえ、といったことのツケが回ってきている感じがします。そんな中での生分解性プラスチック生産はとても興味深く映ります。今後も東南アジアのエコ問題、注視していきたいと思います。

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