【タイ】「売ること」に重きを置いた日本のデパートと「楽しむ場」を提供するタイのデパート

【タイ】「売ること」に重きを置いた日本のデパートと「楽しむ場」を提供するタイのデパート

Advertisement

ECによってショッピングのあり方が変わり、日本のデパート業界の衰退が話題になることがありますが、タイのデパート業界はどうでしょう。デパートの業態自体が時代にあわなくなっていると言われている日本とは裏腹に、タイでは現在多くのエリアで立て続けに新しいデパートが建設されています。この背景には、タイのデパートの店づくりと、顧客の楽しみ方が日本のデパートとは違った何かを持っているからではないでしょうか。タイと日本のデパートを比較しながら考えてみたいと思います。

タイと日本のデパート比較

タイと日本のデパート構造の違い

タイのデパートの構造は、近年建設されたものを見るとほぼ吹き抜けの構造をしています。この空間を広くとった店舗づくりは、建設に使える土地が都心でもまだ余裕のあるバンコクなどと日本とでは事情が違いますが、一般的な日本のデパートの整頓されたコンパクトな構造に比べ、長時間過ごしても疲れにくいのはタイの方ではないでしょうか。

また、構造ではありませんが、タイのエスカレーターは上りと下りの方向が時々入れ替えられます。これによって来店客の流れが変わり、全体の活性化に繋げているものと思われます。ただ元々エスカレーターの位置が不規則で散らしをやりすぎのモールは、館内の移動で煩わしい思いをすることはあります。

「インスタ映え」を意識したタイのデパート

タイのデパートの一つの特徴といえるのが、写真を撮ることを前提とした撮影ポイントを設けている店舗が多いことです。タイ人は写真撮影がとても好きで、若い女の子でもゴツくて本格的な一眼レフを持って撮影する姿をよく目にしますが、写真好きにあわせているだけではなく、場を楽しんでもらうことが出来る空間づくりの意図がはっきりしています。

例えばアソークのTerminal21の各フロアにあるオブジェなどは、話題になりましたし、タイ人だけでなくアジアや欧米からの観光客も撮影を楽しんでいます。これが日本だったらどうでしょう。話題性はあってもあからさまな「はいどーぞ」はやや敬遠される傾向がありはしないでしょうか。それは次の点でもいえるかもしれません。

エンターテインメントは当たり前のタイのデパートと過剰な派手さを嫌う日本のデパート

タイのデパートでは頻繁に館内の特設ステージでライブパフォーマンスが行われます。また新商品などのプロモーションでも大掛かりで凝ったセットを設置して、プリティ(イベントモデル)が販促活動を行うなど、エンターテインメントで派手な演出が好まれます。これが日本であれば、静かに買い物に集中できないと批判があるかもしれませんね。確かに国民性による好みの違いはあるといえますが、ここでも場を楽しんでもらおうというデパートの工夫が伺えます。

Advertisement

EC時代で苦戦する日本のデパート。タイのECの現状は?

もはや商品を確認するだけの場所という感覚で店舗売りを利用するほど主流となった日本のEC。ではタイのECは現在どのような位置にあるでしょう。

タイでは現在ネットショッピングの宣伝は盛んです。LAZADA(ラザダ)が最も利用されているECサイトですが、台頭してきているのがShopee(ショッピー)です。3年程前は、クレジットカード決済システムのトラブルなどによる不信感などから伸び悩んでいた時期はありますが、今後は更に伸びていく傾向にあります。

「売る」だけじゃないタイのデパートと、「買う」だけじゃないタイ人顧客

ECが一般的になっていくタイの販売市場で、今後タイのデパートが日本のデパートと同じ歩みをたどるかというと、そうではないように思えます。「買う」目的を満たすならだけなら、安く同じものが買えるネット販売に流れていくでしょう。確かにデパートは物を買うための場所ですが、タイでは物を買うだけではなく楽しく過ごす場所としてデパートに親しんでいるようです。

また、世界的にソーシャルメディアの利用率の高いタイでは、デパートでもソーシャルメディアに連動していることが多く、販売以外にもブランディングや拡散などのネット戦略も含んでいます。このように多様化している販売市場でありながら、未だに露天販売も衰えることのないタイは独自の発展を遂げているマーケットであるといえるでしょう。

Advertisement

タイの自ら楽しもうとする姿勢

日本を一歩出ると外国人について感じることですが、タイでも何かちょっとしたイベントなどに出くわしたときは、積極的に自ら楽しもうとします。これが前述の撮影スポットやエンターテインメントに少なからず繋がってくるのではないかと思います。今後の日本のデパートも、日本人にフィットした自ら楽しもうとする姿勢を促す何かを開発することで、新しい魅力を持った店づくりを構築することができないだろうかと考えます。そしてタイ進出における店舗づくりや販売戦略も、日本人にとってはやや苦手な明確さを表現していく必要を感じます。

ビジネスの最前線で勝ち残るための必要な情報が凝縮 日経ビジネス


Advertisement

ASEAN進出カテゴリの最新記事