現在ホーチミンにはおよそ1万人近い日本人が住んでいます。年々増加の傾向にあり、それに伴って日本人向けのサービスも増えており、特に進出において飲食業は、ASEAN諸国の中でも人件費がまだ安いことなどから人気が高まっています。ホーチミンで日本人の多いエリアといえばまず1区があげられ、特にレタントンは日本人街といわれるほど日本食のお店が多く、中でもベトナム語で路地を意味する「ヘム」とよばれる区画は、迷路のようにたくさんの路地のある場所で、そこに日本食のお店などがびっしりとならでおり、近年は多くの新しい店舗がオープンしています。ではこのヘムには市場としてどのような魅力があるのか、その特徴などとともに考えてみたいと思います。
ヘムのロケーション
ヘムのあるレタントンは観光地として有名なドンコイ通りから歩いて行けます。ドンコイから見るとサイゴン川方向の東に位置し、レタントン通りには日本食のお店やマッサージ店、そしてサービスアパートメントなどが多くならんでいます。ヘムはレタントン通りからと、レタントン通りに交差したタイバンルン通りからの2箇所の入り口があります。
マップ
ヘムを構成するお店のカテゴリー
ヘムを構成している飲食店のカテゴリーで圧倒的に多いのがカウンターバーです。それに次いで居酒屋や焼き鳥、またラーメン屋などの日本食のお店があり、あとはマッサージやサービスアパートメントなどとなります。
ヘムの客層
日本人客
ヘムの客層は日本人の駐在員や現地採用の社員、そして出張者、観光客となります。編成として在住者であろう3人前後くらいが最も多く、5人以上になると出張者も加わった食事会が多いようです。
韓国人客
韓国企業の多いホーチミンには7区に韓国人街とよばれるエリアがあるほど韓国人が多く居住しています。ヘムにも会社帰りや出張者などの韓国人客が訪れ、日本人客がヘム全体の7割ほどで考えても、韓国人客の比率は少なくなく、そのため韓国人客を積極的に取り込むための対策として韓国語の表示のあるお店をよく見かけます。特にカウンターバーなどのFacebookページには日本語と韓国語が併記されているお店が多くあります。
その他
観光都市のホーチミンには世界中の国々から観光客や出張者が訪れますが、日本人、韓国人以外にはやはり中国人客が多く、そしてその他シンガポールなど近隣国のアジア人や、多くはありませんが欧米人客もヘムにやってきます。
ヘムの時間帯による客層の変化
お昼はランチをやっている日本食のお店がたくさんあります。定食ランチメニューなどが充実したお店はよくお客さんが入っているようです。ただ店舗自体の面積が狭いので、回転はよくしたいところでしょう。客層は主に日本人会社員で出張者らしき人も多いように感じられます。このランチタイムはお店によって集客数に格差があり、ランチタイムであるにも関わらず一人もお客さんが入っていない店舗も見かけます。
夕方からは、レタントン通り界隈で食事をした後、カウンターバーで飲むというパターンが多いようです。その他ワインバーやダイニングなどもありますので、同じお店でずっと過ごす方も少なくないでしょう。カウンターバーは近年オープンするお店が増え続けており、かなりの数の飲み屋がありますので気にいるお店の一つは必ず見つかるのではないでしょうか。ただ、お店の入れ替わりも激しいので、続いているお店は競争力があるということになるでしょう。
情報交換の場としてのヘム
一箇所集中の日本人街でありため、ヘムは独特の日本人コミュニティであるといえます。在住者は日本にいるように会社の飲み会や友人同士の集まりなどでヘムを訪れ、出張者や旅行者はそれらの在住者と交流を持つことができる場所でもあります。ヘムのお店はカウンター形式がほとんどなので、実際私も隣り合わせた在住の方にホーチミンの生の情報を聞く機会がしばしばあります。このような環境は裏を返せばご近所付き合いのような閉塞感がありそうですが、ホーチミンに来たばかりの人が現地の方に仕事を紹介してもらったなどの話もあるくらいなので、交流の場として有益な面を持っています。
ヘムの店舗の集客方法
ターゲットが日本人である場合、ホームページの方が好まれるところではありますが、やはりここベトナムでもFacebookが主力です。ただ、タイでよくやる日本人客からタイ人客へのスライドを狙うように、日本人からベトナム人へ、という流れを考えているお店は少ないと思います。まず価格設定が高すぎて現地ベトナム人にはあわないことと、ヘム自体が日本人の、そして外国人のための街であるといっても過言ではない場所だからです。
マーケティングにおいて在住の日本人はベトナムのFacebook利用頻度について知っているはずですし、また他のASEAN諸国で働いたことのある日本人はお店についての情報はFacebookを見れば手に入るということを理解しているのではないでしょうか。そしてこの狭い街の性質上口コミが良くも悪くも左右するので、SNSなどのマーケティングも大切ですが、まず基本的なお店の外観などお店の入りやすさや雰囲気づくりは大きく影響するといえるでしょう。
ヘムの店舗の家賃
ヘムでの飲食店運営を考えている方にとってテナントの家賃は気になるところですね。ヘムの店舗の構造は、たとえば3階建ての建物があるとしたら、日本の店舗のように各階を別の店舗が借りるのでなく、一軒を全て借りることになります。家賃はネットの情報では2000USD、デポジット(保証金)2〜3ヶ月分くらいから出ている物件もありますが、ヘムは場所がかなり肝心で、カウンターバーの店長などにいわせると、3000 USD以上だしてもわかりやすい立地が良いといいます。知人にお店を紹介されたのはいいけどヘムの複雑な構造に迷って結局お店まで行きつけなかったという話もありますので、立地に関しては充分なリサーチが必要です。
密度の高い交流を促す日本人街レタントンのヘム
タイの日本人街と比較すると、ヘムは見た通りに道幅も店舗面積も狭く、密着した交流の場です。このヘム独特の雰囲気はまだ昔の東南アジアのにおいを残しており、文化的な面でも興味深い場所です。今後ヘムでお店の開店を計画されている方は、かなりの激戦区に参戦することとなりますが、是非ご飯も飲みごともここ!とお気に入りになるようなお店の運営にチャレンジしてみてほしいです。
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