タイはASEAN諸国の中でもオーガニックが浸透している国です。その理由に、タイ国民に愛された故プミポン前国王によって設立されたロイヤルプロジェクトの食品がタイ全土に広まったことと、経済成長による生活水準の向上や高齢化による健康意識の高まりから、安全な食に対する関心が強くなっているためです。それではタイのオーガニック市場がどのようなものであるか見ていきたいと思います。
タイのオーガニック市場はロイヤルプロジェクトから広まった
現在のタイではカフェなどオーガニックにメニューを食べることができるお店が多くあり、ヴィーガン料理やベジタリアン料理も流行っておりよく目にします。オーガニック食品もいろんな場所で売られており、日本の価格からすると安く手に入ります。タイでこのようにオーガニックが広まることとなったのはロイヤルプロジェクトが大きく影響していると言っても過言ではないでしょう。
ロイヤルプロジェクトとは
1969年にラマ9世(故プミポン前国王)がアヘン製造につながるケシ栽培をしていた山岳民族のドイ・プーイ村を訪れた後、代替農業がケシ栽培に代わるものとして使われ、そして森林減少、貧困およびアヘン生産問題を解決すべく設立された非営利団体で、先王自らプロジェクトを主導しました。ロイヤルプロジェクトはサステナブル(持続可能)な農業を目標に掲げ、有機栽培にも注力することでタイ国民の食生活向上を促すためのものでもあります。1988年にはRamon Magsaysay Awardを受賞しました。
ショップはオートーコー市場や、モール、空港などに様々な場所にあり、お土産品の購入などでも人気があります。
タイ人の健康意識について
タイ人の健康意識はどのようなことから高まっているのでしょうか。以下興味深い調査とその結果があります。
タイ人の死亡の主な原因
第1位
虚血性心疾患68.8千人(13.7%)
第2位
脳卒中51.8 千人(10.3%)
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第7位
糖尿病20.7千人(4.1%)
2012年調べではありますが、上位に生活習慣病に起因するものがランクインしています。
出所: WHO 「statistical profile」
バンコク都民の健康長寿意識
バンコク都在住の男女各200 名(合計400 名) を対象とし、2017年12 月にアンケート調査を実施。
生活における最も重要な要素
20代 家族45%、健康31%
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50代 健康59%、家族30%
上記のように20代では家族が最も大切であるという回答に対して、50代になってくるとこれが逆転し、健康が最も重要であると考えるようになっています。
健康増進のために取り組んでいること
年代を問わず「運動」そして「食事制限」が圧倒的に多い回答でした。
子どもの健康増進
食生活改善- 野菜を摂らせる82%
食生活改善- 塩分と糖分を控える80%
食に関する回答が最も多かったです。
健康イメージの国別比較
健康なイメージを抱く国として日本が「健康」であるという回答が95%と1位で、健康ブランドのタイ進出においては有利に働く結果が出ています。ちなみに2位は韓国で同じく90%に近い数字であり、最も競合する国となっています。
残留農薬の危機感
タイの残留農薬のある野菜についての危機感は以下のようなことから伺えます。
2017年タイの消費団体が野菜、果物の残留農薬の調査が、市場、スーパーなどで販売されていた商品を対象に実施されました。結果多くの基準値を超える農薬が検出されました。
また、タイには中国産野菜が多く輸入されていますが、中国産野菜への信頼は薄く、安全性が問題視されています。
このようなことから国民の健康を考えたオーガニック市場の拡大と需要の底上げが国の事情として伺えます。
タイのオーガニック認証
タイのオーガニック食品は一般の食品と比較してもそれほど大きな価格の違いはありません。これにはオーガニック認証が関係しているようです。オーガニック認証“Organic Thailand”は、認証を受けるだけならコストがかかりません。
日本の場合は、有機栽培(有機JAS)認証を受けた野菜は、一般に売られている野菜に比べ2倍以上するものが多く、その理由として大きな規模での栽培ができないこと、また手間がかかること、それに加え輸送コストや認証を受けるための費用がかかるためです。
日本に比べるとタイのオーガニック認証は年会費もかからないという大きな特徴を持っています。
タイでは身近な存在のオーガニック
以上のように健康意識や食材への危機感など、国も国民への食の安全を対策している背景を持つタイは、オーガニック食品がとても身近な国であるといえます。市場としては国全体にオーガニックが浸透しており、またタイ人以外にも食への意識が高い在留する外国人が多いことから、ポテンシャルがあると考えられます。ただし、農園などでの自家栽培となると地質や気候など様々なハードルはあるといえるでしょう。