2020年3月15日フィリピンのドゥテルテ大統領は、3月15日から4月14日までの一ヶ月間マニラ首都圏を封鎖し、夜間の外出禁止や、マニラへの出入り禁止、新型コロナウイルス(COVID-19)の日本を含む感染発生国からの入国を制限すると発表があり、「マニラ封鎖」が始まっています。3月17日にはルソン島まで対象地域を拡大し、経済にも大きな影響を与えるであろう今回の封鎖。本記事ではこのマニラ封鎖開始前後の街の様子などをお伝えします。
マニラ封鎖の主な内容 ※3月12日発表のマニラ封鎖内容
・マニラ首都圏に出入りする陸路、内航船舶、国内便航空機の出入り禁止。
・全てのレベルの学校を4月12日まで休校。
・多くの人が集まるイベントは禁止。
・夜8時から翌朝8時までの夜間の外出禁止。など
マニラ封鎖前日2020年3月14日
ホテルやモールなどの対応
まずこれはマニラ入りした3月12日からですが、ホテルに入るときは必ずドアマンがガンタイプの体温計を額にかざして熱があるか確認、そしてアルコール消毒を促される、といった対応がありました。
マニラのマカティエリア最大級のショッピングモールであるグリーンベルトでも、入店する際はやはり体温のチェックが必ず行われていました。
一般の飲食店はそれほど徹底してはおらず、特にアルコール消毒を置いている店舗は多くない印象でした。
2020年3月15日0時に向けて
3月15日0時から始まるマニラ封鎖。夕方の時点ではまだ飲食店なども通常通り開店していましたが、13日の時点ですでに休業しているサービス業もあり各店舗によって閉店のタイミングはまちまち。リトル東京は意外にもほぼ通常と変わらず飲食店やカラオケは営業しており、営業時間が短くなっている店舗もありましたが、基本的に翌日からの完全閉店でした。
この日から検問所のチェックポイントが通常より多く設けられるようで、夜間サービス業の従業員などは職質を受けることを懸念し、営業時間が遅くなるのを気にしているようでした。
その他バーやパブなどの深夜営業の店舗はレストラン系以外ほぼ閉店していました。
ドゥテルテ大統領のマニラ封鎖令に対する市民の反応
ドゥテルテ大統領の決定を批判するような声を聞くことは無く、大統領令だから仕方ないといった風で、それだけ支持率は高い印象です。
閉じられたシャッターに貼られた紙には、コロナウィルスの感染拡大防止策による大統領令についての説明と、最後に「私達の健康が第一」といったことが書かれている店もあり、封鎖に対する一定の理解が見られました。
しかし、実質失業している日雇い労働者などの層についての補填について具体的な発表はなく、今後各層からの批判が出ることも予想されます。
現地フィリピン人の日本人に対する反応
ネットを見ていると、インドネシアでは乗車拒否や入店拒否などの日本人へのハラスメントがあったなどのニュースを見かけ、マニラで「何人?」、と聞かれて、日本人と答えるたび相手の反応を見ていましたが、インドネシアのニュースのような反応は無く、
「Oh! アリガトウ!」「コンニチワ」などのことばが陽気に飛び出していたので何となくホッとしました。
ホテルの移動願いをされる
ホテルに戻るといきなり近くの姉妹ホテルへの移動をお願いされました。最初オーバーブッキング系の理由かと思い抗議すると、ホテルを翌日から閉鎖するとのことで、にわかに信じがたく不満を漏らしましたが、実際には翌日からホテルは閉鎖しており、非難したことを申し訳なかったと思っています。
この前日に部屋に戻ると、今回のマニラ封鎖についてと、アドバイスする用意があるとのメッセージを書いたコピーがベッドに置いてあり、予め旅行者の国際線には影響がないことを知っていなければパニックになるところでした。
マニラ封鎖当日 2020年3月15日
封鎖当日、マカティエリア最大の商業施設であるグリーンベルトに昼前に行ってみました。移動中に車の中から見る街の様子は静まり返っており、日曜日ですがほとんど人を見かけません。
グリーンベルトに着くと入り口からは営業していないように見えましたが、来店客が中に入るのが見えるとホッとしました。館内に入ると外からの様子とは違って人はそれなりに多かったのですが、目当てのレストランは営業しておらず、封鎖の影響を感じました。
夜間外出禁止令
この日の夜は開店している飲食店が一気に減っており、ホテル近くでもあまりこれといったお店が見つからず、韓国焼肉のお店があったのでそこで済ませました。20時以降から深夜は歩いている人がほとんどおらず不気味に静かで、厳戒態勢に入っていることが感じられました。
マニラ封鎖翌日 2020年3月16日
まるで戒厳令下の街
マニラ封鎖開始から2日目のこの日、車は走っていますが街はとても静かでした。月曜日だったので会社員は見かけますが、確か必要最低限の出勤だったと思います。
基本的には外国から来た観光客らしき人の姿があるだけで、道路には銃を持った警備員が立っており、まるで戒厳令下のような雰囲気でした。
グリーンベルトエリアのモール閉店
この日よりグリーンベルトエリアなど全てのモールが閉店。昼食のために来ましたが、周辺の飲食店すら開いておらず、お昼時にスーパーなどで買い物をする会社員が見られました。しかし販売店は少なく限られており、在住と思われる欧米系の会社員もどこで買えばいいかをビル警備の人に尋ねるなど苦労していたようです。
開いてるお店はテイクアウトのみOK
グリーンベルト周辺でやっと営業中のカフェを見つけて喜び中に入ると、椅子は全部テーブルの横に伏せられておりテイクアウトのみ。それでも食べ物が買えるだけまだマシです。
サンドイッチとコーヒーを買って外で食べるながら街を眺めていると、ふとクーデターの起きている国にいる気分になっていた自分に気づき、改めて非常事態であることを実感しました。
変な話、タイでクーデターが起きていた時よりも、この日のマニラの方がよっぽどクーデターっぽさあったように思います。
ニノイ・アキノ国際空港にて
この日がタイへの帰国日でした。マニラ封鎖発表の速報を日本にいる弟から聞いて初めて知ったときは、帰りの飛行機に乗れるのか焦りましたが、国際線は通常通りとのことで安心していたものの、空港で自分の乗るバンコク行きのインフォメーションが出ているのを見て安堵しました。
レストランもテイクアウトではなくちゃんと座って食べることができる有り難さ!
帰国の飛行機内の疑心暗鬼
フィリピンの渡航者は他の東南アジアに比べ多国籍な印象で、欧米人も多く、それによってより異国感があったのですが、もはや同じ便に乗り合わせる乗客の国籍が多いほどコロナウィルスへの心配が増す感じです。
そして搭乗の際のチェックでパスポートを提示すると、必ず日本人はどうなんだとスタッフ同士で確認が始まります。もはや日本のパスポートは世界最強の面影はなく、感染が疑われる国のパスポートとなっています。
このため私が周囲に感じている不安と同じように、周囲も日本人である私に対して警戒しているのでは、という感覚が芽生え、いろいろ疑心暗鬼状態でした。
タイも足並みを揃えた?
タイも3月18日からタイ政府の新型コロナウィルス感染拡大防止策により、バンコク及び周辺の県の娯楽施設の営業禁止が始まりました。この少し前ホーチミンも夜系の店舗の営業禁止を発令しており、タイミング的にタイも周辺諸国にならったのでは?という気もしますが、実際パブでの集団感染例も出ているので今回のような対策は時間の問題ではありました。
他国に比べまだ良い方だったように見えたタイやその他東南アジアの国々ですが、今後は動向が予測できない状況になってきそうです。
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